ツバキ文具店

小川糸(幻冬舎)
鎌倉にはいくつかの大切な場所と思い出があるけれど、決して詳しいわけではない。
そんな私に、鎌倉の四季の情景がありありと思い浮かべることが出来たのは、この作者の描写力のおかげなのだろう。

主人公の鳩子は、鎌倉で小さな文具店を営むかたわら、手紙の代筆を請け負っている。
友人への絶縁状、借金のお断り、天国からの手紙…。
そして先代である亡き祖母の存在が、心のしこりとなったままだった。

小川糸さんの作品を読む楽しみが、日常の作法と食べ物の描写。
誰にでも日常生活の流れというか癖がある。そこを掬うのがとても上手くて、なぞっていて楽しい。
食べ物の描写についてはデビュー作の『食堂かたつむり』でとっくに証明されているので省略。

文字を書く機会が本当に減ってしまったけど、心をこめて書きたいと思いました。
手始めに息子の保育園の連絡帳からやってみよう。

 よく考えると、自分で自分の姿は見えないのだ。手や爪先は簡単に見えるけれど、背中もおしりも、鏡に映さないと見えない。いつだって、自分よりも周りの人の方がたくさん私を見ている。だから、自分はこうだと思っていても、もしかしたら他人は、もっと別の私を見出だしているのかもしれない。昼間の舞ちゃんとの会話を思い出していたら、そんなことを考えていた。

▽a piece of cake 4u▲

ひと切れのケーキの力を信じて。 from広島